ミロク情報サービスが今年8月に実施した税理士事務所へのアンケート調査(11月公表)によると、インボイス制度の影響で記帳代行業務が増えたと回答した所長・職員は全体の85%に上る。しかし、その業務増加分を顧問料に反映できた事務所は一部にとどまる。インボイス開始後に顧問料を「値上げした」と回答した事務所は23%に過ぎない。「値上げを行う予定」が9%、「値上げを検討したが決まっていない」が31%で、制度が始まってから1年が経とうとしていた段階であるにもかかわらず、多くの事務所は負担増でも顧問料を引き上げられない、実質的な顧問料の値下げ≠強いられている状況だ。
インボイス制度や電子帳簿等保存制度によるペーパーレス化、行政書類の押印廃止など税理士業務に関わる様々な制度が見直される中で、会計システムをはじめとしたITツールの活用によって業務の負担を減らす「IT化」や「デジタル化」は欠かせない。だが、既存のIT化・デジタル化だけでは顧問料の実質的な値下げは避けられず、事務所経営が立ちいかなくなるおそれがある。
IT化やデジタル化に代わる重要なキーワードがDXだ。これは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、英語でトランス(交差)がXと略されることからDXと表されている。
DXは、デジタル技術を駆使して既存のビジネスモデルを変革していくことを意味する。IT化がデジタル技術を使って既存業務の効率化や価値向上を目指すのに対し、DX化はある分野のビジネスモデル自体の変革を目的としていることがIT化とは異なる。経産省のガイドラインでは「デジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とある。「変革」といったキーワードがDXの意義を象徴している・・・(この先は紙面で…)