▼今週の注目記事  社長のミカタ 12月号1面より

無税と思っていた資産移転での落とし穴
みなし贈与に要注意

 「あげます」「もらいます」という当事者双方の合意によって成り立つ贈与だが、税法ではそれ以外に、合意がなくても実質的に贈与があったとみなされて課税される「みなし贈与」が存在する。満期保険金の受け取り、財産の低額譲渡、親子間の金の貸し借りなど、「みなし贈与」の可能性はいたるところに存在する。これから年末にかけて、「年内に、今年分の暦年贈与≠済ませておこう」と考え、せっかく110万円枠のルールを守って贈与したとしても、自分では気が付いていない「みなし贈与」がほかにあればトータルで課税されてしまう。無税と思っていた資産移転で多額の税負担が生じることもあり得る「みなし贈与」という落とし穴には要注意だ。

気づかないうちに税金が発生

満期保険金の受取人は?

 与者の「無償であげます」という意思表示に対し、受贈者が「もらいます」と応えることで、原則として贈与は成立する。つまり、贈与は当事者双方の合意による「契約」であるといえる。

 しかし、「双方合意の契約」が存在しない財産の受け渡しであっても、贈与税を課す「みなし贈与」のルールが例外的に設けられている。そうしたケースでは本来の贈与とは異なり、双方の合意が不要なため、当事者間では贈与を行ったという認識がない。だから「気づかないうちに税金が発生していた」ということもあり得る。

 みなし贈与の典型例として挙げられるのが、生命保険の満期保険金だ。保険料を支払う契約者と保険金の受取人が異なっていると、満期保険金や解約返戻金に贈与税がかかることになる。仮に、若いころに定期の生命保険に加入し保険金の受取人を妻にしていたとする。そのまま満期を迎えて妻が保険金を受け取ると、妻に贈与税が課されてしまう。贈与税の負担を避けるためには、満期を迎える前に受取人を保険料の負担者本人に変更しておくべきだ。契約者も受取人も夫とする保険なら、保険金は夫の一時所得となるため、所得税が課されるものの、課税対象となるのは「受け取った保険金の総額からすでに払い込んだ保険料または掛金の額を差し引き、さらに特別控除額50万円を差し引いた額の2分の1」のみだ。基礎控除110万円を除いた全額に課税される贈与税と比べて、実際の税負担を格段に軽くすることができる。

 すでに保険金を受け取ってしまっている場合は、贈与税の負担を回避するのは難しい。現金の贈与であれば、同じ年のうちに現金を返すことで贈与そのものをなかったことにできる可能性がある。しかし、保険金については支払われた時点で贈与が成立しているとみなされてしまう。後から保険金を返金して贈与をなかったことにしようとしても、税負担を回避するどころか、贈与が2回あったとみなされて二重に課税されてしまう可能性もゼロではない・・・

(この先は紙面で…) 購読のお申込みはこちらから>>

 

巻頭コーナー
   ● 賢者の言魂
   ● コラム二升五合

ニュースダイジェスト
税務・税制特集
歴史建築散歩道
社長の豆知識
   ● TAX・経営プチ解説

不動産・資産・相続
経営改善・事業資金
セミナールーム
保険・年金・マネー
社長の書斎
   ● ビジネス書ブックレビュー
   ● クロスワード・ナンプレ
   ● 社長のミニ雑学「社名の由来」 等


▲ページTOPへ