オーナー社長向け財務・税務専門新聞『納税通信』。
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税賠保険を取り扱う日税連保険サービスによると、2023年7月からの1年間で保険金支払いの対象となった事故は633件で、合計金額は23億7200万円に上る。これまでの最多は支払件数581件(21年)、支払金額22億5900万円(19年)だったので、過去最悪≠フ数字を更新してしまったことになる。
保険金支払対象となった事故を税目別にみてみると、消費税が圧倒的多数であることが分かる。事故件数は308件で全体の48.7%を占めている。支払われた保険金の総額は10億6400万円で、これは全税目で最も多い。ちなみに相続税は2億2200万円(33件)、贈与税は1億3600万円(28件)、法人税は6億5700万円(159件)、所得税は2億6100万円(88件)の保険金支払事故が起きている。
消費税は、本則課税制度と簡易課税制度の選択や、課税・不課税・非課税・免税などの課税区分、簡易課税の事業区分の選択など、税額が大きく変わる判断がさまざまな場面で求められる。ひとつの判断ミスで税額が極端に変わってしまうおそろしい税目だ。さらに、まだ慣れたとはいえないインボイスに関する処理でミスが発覚して、事故につながりかねない状況になっている。
消費税の税賠事故で典型的なミスは、原則課税と簡易課税の選択届出書もしくは選択不適用届出書の提出失念だ。その数は年間で201件。消費税関連事故全体の65.3%を占める。
消費税簡易課税制度選択届出書を提出した事業者であっても、基準期間の課税売上高が5千万円を超えると原則課税に切り替わる。その後に原則課税が数年続いたとしても、課税売上高が5千万円以下になった場合には、簡易課税事業者に戻る。届出書の効力は続いているためだ。原則課税を適用するには、「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければならない。
設備投資などで仕入額が大きくなる事業年度は、当然ながら実際に支払った消費税額も大きくなる。つまり、簡易課税方式よりも原則課税方式が有利になるケースがほとんどなので、年度開始前に簡易課税制度選択不適用届出書を提出して原則課税方式に切り替える必要がある。しかし税理士が届出を失念してしまい、本来であれば納める必要のない税額を支払うはめになってしまう事故が後を絶たない。
簡易課税制度選択不適用届出書の提出忘れによる税賠事故は毎年多発しており、直近でも113件を数える・・・(この先は紙面で…)