引地氏によると「以前は空室があっても税務調査では厳しく言われなかった」とのことだが、最近は貸家や賃貸アパートの敷地に活用する土地を指す「貸家建付地」や賃貸割合の計算で「空室の評価に対して厳しくなってきている」と話す。 賃貸割合は課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積を各独立部分の床面積の合計で割って計算される。しかし、課税時期が一時的に空室となっていても、@各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること、A賃貸人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途で使用されていないこと、B空室の期間が一時的な期間であること、C課税時期後の賃貸が一時的なものでないこと――の条件を満たせば空室でも賃貸されていたものとして計算して差し支えないとされている。 引地氏は「(税務署は)賃借人が部屋を出たらまたすぐに新しい賃借人が入ってくるというイメージしかない。だから、空室が出たら、すぐに募集を行うことが重要。その時に必ずチラシをとっておくこと。不動産屋に募集をかけている証拠があれば、数カ月は空室になっても、賃貸されていたものとして認められる」とアドバイスした。 また賃貸経営する場合、事前に受け取った敷金や家賃などの処理が難しい。税理士として、これらを相続税の評価上、債務として控除していいのかどうか気になるところだ。引地氏は「前受敷金は相続税の計算上、債務として控除しても問題ないが、前受家賃は確実な債務でないから、控除してはいけない。前受敷金は賃借人に返さなくてはいけないもの。債務として控除していいものは絶対に返さないといけないものが債務控除できる。前受家賃は賃借人に返さなくていいものなので、債務控除してはいけないことを知っておくべき」と指摘した。 |